生産性向上と働き方改革

 年末年始を利用して「変化に適応して成長を続ける優良企業の特質」が記載されている書籍「エクセレント・カンパニー」(訳)大前研一、(著者)トム・ピーターズ他、(出版社)英治出版を読みました。日本では職務給や転職が推奨されていますが、アメリカの優良企業はそれを必ずしも是とはしていないようです。

 また、日本企業の生産性は世界的に低レベルにあるという理由から、新たな機械設備(自動化等)を導入したりDX化が推奨されていますが、「資本投下だけで差をつけることはできない。製品の品質と従業員の生産性は、経営によって決まるのです」と本田技研某副社長がお話しされていたとその書籍には記載されていました。どんなに優秀な設備があっても、またデジタル化を推進したとしても、それらを使いこなせる人間がいなければそれらが有効に使われることは無く、また更にそのような人達がうまく成果を出せるような経営ができていなければ、場合によっては生産性を落とす原因となってしまうと私は思います。

 また更に、アメリカは解雇自由の国と誤解している日本人が多いようですが、アメリカの優良企業では雇用保障(不況でも解雇しない)をし、疑似家族的経営をすることで従業員が安心して働き、その能力を発揮することが出来る場を提供しているようです。因みに、アメリカの優良企業では「社内競争従業員教育を重視し、十分な訓練を行い、自己研鑽の機会を与え、その「結果」と「評価」とを重視しているそうです。

 そこで、ご参考になれば幸いと考え、アメリカの優良企業がどんなことを考え経営しているのか書籍「エクセレント・カンパニー」で要約されている内容の一部をご照会させて頂きます。ここでは十分に記載さることが出来ませんが、アンチMBAのことも記載されていますので、ご興味がある人は是非に書籍を購入されお読みください。私はこの書籍を読んでいるうちに何故か分かりませんが京セラ創業者の稲盛和夫翁が行われていた「アメーバー経営」を連想し、またこれはジョブ型(職務に人を貼り付ける戦略優先型)ではなくメンバーシップ型(ヒトに職務を貼り付けるヒト尊重型)の会社運営ではないかと思いました。

(Ⅰ) 従業員を通じて生産性を向上させる ! (=全ての従業員を単なる労働力としてではなく、品質と生産性向上のアイディア源として接する。従業員を「大切にする」ということは「甘やかす」ことではない)

(Ⅱ) 顧客に密着する !  顧客から学ぶ ! (=「収益は顧客志向の結果」と考え、常にお客さまの声に熱心に耳を傾ける。)

(Ⅲ) 行動を重視する ! 「すぐに、やってみよう! ダメなら直せ! 試してみよう! (=分厚い資料を作ったり調査に時間をかけるよう指示するよりも、チャレンジによる小さな失敗を多数することを奨励し許容する)

(Ⅳ) 従業員の自主性と起業家精神を尊重し、社内に多くのリーダーを育てる ! (=実践的なリスクを冒すことを奨励し、「惜しい」失敗を支援する会社風土を醸成する。そして、その為には緊密なコミュニケーションが大切)

(Ⅴ) 核となる信条をもち、信条に対して首尾一貫した行動を実践し続ける ! (=働く人の誰もが「仕事に誇り」を持てるようにするために共通した目的を見出し信条にする)

(Ⅵ) 企業の価値観と信条は「厳格」に管理/徹底し、社員の「自主性」と「起業家精神」と「革新の気運」を発揮することを「許容」する ! (=社員が自主性と起業家精神を発揮できるように「現場の自主性」を大切にする環境(権限移譲)を維持しながら、企業精神の中核となるいくつかの「価値観」については厳格に管理し会社の末端まで指導・徹底する)

(Ⅶ) 分かり易い単純な組織、小さな本部 ! (=本部(本社)は絞り込んだ少人数にすることで肥大化させず、管理業務は増やさず、常にスッキリと単純化させる)

(Ⅷ) M&A等をするときに、自社の基軸(得意とする技術・サービス)から離れない、又はそれに関連する分野に進出する ! (=新たな挑戦をしないというのではなく、自社の「独自固有の長所」を自問して離れないようにし、自分が分からないことには手を出さない)

なお、これも同書籍の中からの引用ですが、

「米国企業の起業家精神はすばらしい。日本企業の家族主義規律の良さもすばらしい。その両方を取り入れて、うまくやっている会社もいくつかある。」

と記載した上で優良企業を紹介し、

第2版の「新 エクセレント・カンパニー」では

「新しいソフトウェアの導入は状況を悪化させる可能性がある。ソフトウェア導入に伴う非人格化は、部門間の絶妙な調整がものをいう局面で、災いを引き起こす。」

とも警鐘しています。