労働時間削減のヒントは中小企業白書に

 労働基準監督署による臨検調査が強化され、また"働き方改革を推進する"ために労働時間(特に、残業時間数と休日労働時間数)を削減する必要に迫られている企業さま、或いは人手不足で困られている企業さまは多いことであろうと推測致します。

しかし、労働時間だけを削減することは簡単なことですが、それによって業績が落ちるようなことがあってはならないものです。業績を落とすことなく寧ろ伸ばし、かつ労働時間を削減するにはどうしたら良いか? 過去のやり方や考え方に固執することなく、この2つのバランスが大切なのだと私は考えます。

 また更に、残業時間数を削減しようとすると従業員さんの手取額が減ってしまうので、残業時間数削減に従業員さん達が本気で取り組もうとしない現象も発生します。

各社各様の事情がおありだと考えますが、私は2018年度版中小企業白書の中にそのヒントが潜んでいるような気がします。これによると、労働時間数削減の対策は、

①人材育成(多能工化・兼任化)

②業務効率化(マニュアル化と見える化)

③周辺業務のアウトソーシング(外注)

④IT化投資(クラウド・ソフトの活用など)

⑤機械・設備投資

⑥研究開発投資

の対策があり、計画的かつ中長期を見据えた対策が必要であると指摘し、各社の成功事例まで掲載しています。

要するに、「人手不足だ!! 」「労働時間数削減だ!! 」=「求人しよう!!」など短絡的に考えず、どんな対策が自社には必要であるかを検討することが必要だということです。

 私は経営・労務相談のご依頼があった場合には10年以上前から「時間当たり生産性」を一つの指標(メルクマール)として活用することをお勧めしてきましたが、そのことも記載されています(集計し難い、従業員に分かり難いという難点がありますが・・・)。企業が生み出す付加価値(経済的利益)は増加したが、それに伴い従業員数又は投下資本額も増えた結果、”一人当たり”或いは”1時間当たり”の生産性が減っている場合がよく見受けられ、このような場合において人・モノ・金に対する企業の管理能力が改善されてない場合に、私は「企業組織の肥満化・肥大化」と呼び、改善するよう警告してきました(改善しなければ、いずれ風船に針を刺したときのように破裂してしまう)。

 何れにしても、少子高齢化が現実のものとなり労働力人口が減少している現況においては、世の趨勢として”働かせ方改革”を推進せざるを得ず、各企業とも従来の考え方・やり方では無理が生じ、新たな考え方・やり方を模索せざるを得ないと思いますので、是非に中小企業白書を読み、何がしかのヒントを見つけ出されることをお勧めします。

 中小企業白書は分厚い書籍ですが、過去や現状の分析は読み飛ばし、自分では理解し難い箇所も読み飛ばし必要ならば専門家に問合せし、マトメと各社事例を読まれると良いのではないかナ?と私は考えます。