就業規則より先に従業員教育を!!

今日は、あるサービス産業を営む個人企業から「就業規則を創って貰いたい」という依頼があったのでお伺いしました。

就業規則を創ることでどんなことを期待するのかを確認した処、①服装のこと、②化粧や香水のこと、③電話応対の仕方のこと、④客待ち時間の態度のこと、⑤上司からの指示の聞き方のこと等、色々なことを記載して貰いたいそうです。これらのことを就業規則に記載することは容易いことです。しかし、よく考えてみると、これらのことは入社時の新入社員教育として教育すべきことばかりです。

こんな会話をした結果、私が先方にお話ししたのは「どうも貴社の従業員さん達は、社会人または会社組織人として守るべきルール・マナーを軽視して、個人の自由ばかりを優先させていらっしゃるようです。本当の自由とは規則やルールを守った上で得られるものであり、個人の自由ばかりを優先させている今の状態は"自由な状態"ではなく"放任された状態"であると言います。まずは社員教育をして会社の組織人としてのマナーを教え、それを守らせるようにしましょう。そうしないと就業規則を創っても、その就業規則を守らない従業員ばかりの会社のままでは、就業規則を創る意味がなくなります」ということです。

こんなお話しをさせて頂き「就業規則を創っても、そこに記載される内容は法律用語を使用したり、比較的抽象的な表現の内容となり、従業員に理解し難いものとなります。そこで就業規則には例えば""服装は清潔で仕事をする上で邪魔にならず、またいかなる顧客にも不快感を覚えさせないものを着用すること""と記載するに留め、就業規則以外に社内ルール集を設け、それには""①厚化粧をしないこと、②香りのキツい香水を使用しないこと、③露出度の高すぎる服装を着用しないこと、④頭髪は手入れし清潔を保つこと、⑤爪は衛生上の問題が生ずるので清潔が保たれる程度に切ること・・・・""と具体的に従業員に分かるように記載し、""以上のことの是否の判断は主観的判断を避けるため社員2名と店長との総合評価で判定する。注意しても是正しない場合は就業規則により懲戒処分の対象とする""と記載しましょう。そのタタキ台は私が創りますから、禁止したいことや守らせたいことを箇条書きにして私にFAXしてください」と提案しました。

会社が私の提案に賛同したことは言うまでもないことです。しかし、個人企業でよくある例ですが「会社側が仕事ばかりを優先させたり、従業員が個人の自由ばかりを主張し、組織人として守るべきルールを会社側が従業員に遠慮して教育していない」ケースです。このとき必要なことは、会社側が従業員に分かり易い内容で社内ルール集を創り、それを繰り返し伝え、社内に徹底していくことです(これが就業規則を周知させていく練習となる)。この基礎的なことが社内に定着していなければ、どんなに優れた就業規則を創ったとしても、それは守られることの無い就業規則(仏を創って魂入れずの状態)となってしまいます。

こんな会話を会社の人とした後に、会社の人に村上社労士事務所が創る就業規則の雛形を見せた処、冒頭に「①従業員は他人(顧客・同僚・上司等)を思いやる心(仁)を大切にしなければならない。従業員は・・・以下"義・・・" "礼・・・" "智・・・" "合・・・"」とある「他人を思いやる心を大切に」という部分に酷く感動されていました。

そこで、私は「労働条件が良い(例えば給与が高い)と良い従業員が集まるというものではありません。労働条件が土台となり、その上に①上司・経営者との信頼関係、②自分の仕事に対する誇り、③同僚との連帯感がなければ良い従業員は定着してくれません。この①②③は法律の世界ではなく、人としてのあるべき姿(道徳)の世界の問題です。過去の貴社は仕事のことと労働条件ばかりに拘り、この①②③に対する教育が欠けていたようです。就業規則創りをしながら、この①②③の教育に関しても私が助言をしていきますから、これからは良い従業員教育をするようにしましょう」と提案しました。

しかし、炎天下をこの会社まで自動車を約1時間運転して行き、先方に時間が無いので昼飯を抜いてこんなお話しを約3時間していたら、流石に疲れました。「ビジネスの成功者」が「ビギナー経営者」に変容するのをお手伝いするのは神経を使いますから・・・。