変形労働時間制についての誤解

ある企業で時間管理と休日の取り扱いについて話題になりました。この企業は何も変形労働時間制を採用していない企業でした。この企業には数年前に変形労働時間制の採用をお勧めしたのですが、何故か変形労働時間制に拒否反応を示し採用されないままでした。

責任者の話しによると「うちは毎月9日の休日を従業員に取らせるよう努力しているから労基法上は問題がない。しかし、繁忙月等では毎週2日の休日を取らせるのが難しい週があり現場は苦労しながら1カ月間で9日の休みを取らせるように努力している」という話しが雑談の中で出てきたのです。

そこで、空かさず私は「同じ週に振替休日を取得させるのならば良いのですが、変形労働時間制を採用せずに、別な週に振替休日を取得させていると残業代の未払いが発生しますヨ!! せめて1カ月単位の変形労働時間制を採用されたらどうですか? いまの運用方法は正に1カ月単位の変形労働制の方法ですヨ。しかも就業規則で特別に定めない限り1週間は日曜日を起算日としますから、現行のように賃金締切日を起算日として実務運用していると思わぬ未払い賃金が発生してしまうこともあります。」とアドバイスし手計算で簡単に説明をしました。責任者が絶句したことは言うまでもありません。

そして更にお話しを聴いていくと、責任者は「実は気候や天候により仕事の繁忙が左右されるので、季節によって繁閑の差が著しいのです。毎月9日の休日を必ず取得させるために現場は物凄く無理をしているし、逆に閑散期は従業員も出勤したものの仕事が無くて仕事を探すのに苦労しているのが実情です」という話しが出てきました。当然に私は「それなら1カ月単位の変形労働制ではなく1年単位の変形労働制にした方が良いと思います」と数年前にお勧めしたことを思い出しながらお話ししました。そして私は「所定休日だからといって絶対に働かせてはいけないという法律はありません。業務都合でどうしても所定休日に働いて貰う必要がある場合は割増賃金さえ支払えば働いて貰うことはできます」とお話ししました。

そして私は、数年前に1年単位の変形労働時間制をお勧めした際に会社責任者が不思議な拒否反応を示したことを思い出し、できるだけ分かり易く平易で身近な言葉で1カ月単位の変形労働時間制と1年単位の変形労働時間制について説明しました。

結論としては、

①直ぐに1カ月単位の変形労働時間制を就業規則に定めて届出をする。

②今期の決算期までに来年度の休日カレンダーをつくり現場で試行することで、1年単位の変形労働時間制の理解を現場にもしてもらう。

ということになりました。

私にとっては基本的なことなのですが、一般の人からすると「変形」という言葉が使われていることで、「何か会社が勝手に都合のようことを始めるようだ」と従業員の誤解を招いている場合もあるようです。