政府が昇給を推奨しマスコミもそれを大々的に報道し、また各県の最低賃金もそれに伴い大幅に引き上げられた為、世を上げて昇給することが当たり前のようになっているようです。
しかし、このようなときは自社の現状を正しく把握(再確認)することが大切です。巷の中小・零細企業では最低賃金法を順守するのが精いっぱいで、とてもそれ以外に昇給を検討する余地がない企業は沢山ありますが、このような場合にこそ従来の仕事のやり方・考え方を改め、もっと1人当たり生産性が上がるやり方に変革する方が良いと思います(これを私は"脱皮する"とよんでいます)。
そして、自社の現状を正しく把握する為には、単に損益計算書(試算表等)の営業利益や経常利益が黒字か否かだけで判断してはいけないと私は考えています。何故なら、損益計算書(試算表等)はフロー(一時的なもの)に過ぎず、それだけでは会社の安全性を判断することが出来ないからです。
会社の安全性を確認する為には損益計算書(試算表等)だけではなく貸借対照表を用いて「総資本対経常利益率」「流動性比率」「当座比率」などが安全と判断できる水準に近いことを確認することが必要ですが、それが煩わしい場合に、敢えて簡単に安全性を確認しようとする場合は、純売上高平均値に対して現預金平均残高が3か月分以上(私の経験値です)あるか無いかで判断することも可能ではないかと思います。
そして、その上で(付加価値)労働分配率も安全と判断できる水準にあること、1人当たり付加価値額がどの程度あるであるか等を確認することが必要であると私は思います。よくあるケースですが、今期は儲かった(損益計算書上で利益が出た)から昇給を検討しようとしていたのだが貸借対照表をもとにして会社の安全性を確認すると、昇給を検討する余地が全くなかったということもあり、このようなときは賞与(又は支給期限付きの諸手当など基本給以外の手当)で検討した方が良いと思います。
なお、付加価値額の計算方法は色々あるのですが、私は比較的簡単な厚生労働省方(営業利益式+人件費・労務費・福利厚生費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課)で計算することをお勧めし、なおそれでも難しい場合はかなり大雑把なモノになるコトはお伝えした上で粗利益額で代用することをお勧めしています。
そして更に、「会社の総人件費=従業員数 × 1人当たり平均的賃金」ですから、従業員数が適正であるか? 人員過剰の部署と過少の部署とがないか? 一部の従業員の賃金だけが高額で他の従業員の賃金が低く抑えられている状態(=会社への貢献度とは関係なく賃金が偏っていないか)ではないか?も検討された方が良いとお話しさせて頂いています。
いずれにしても、変化が激しく、しかもその変化が突然に現れる昨今の混沌とした状況下(カオス状態又は乱気流状態)では、世の流れだけに身を任せるのではなく、自社の現状を出来る限り正しく把握し、その上で付加価値労働分配率を出来る限り適正な水準にすることができるように賃金の改定を行うことが大切ではないかと私は思います。
そして更に、賃金の改定を行う際には必ず人事評価を行い、その評価結果を改定額に反映させることで、会社への貢献度に見合う公平性が確保できるようにすること(一律昇給はしないこと)も非常に大切なことだと私は考えます。