人事評価による面談の大切さ

人事評価(考課)を行って昇給や賞与の額を決めても、本人と面談して「本人が担うべき役割と期待」を本人に伝えなければ、人事評価(考課)は効果を十分に発揮し得ません。

面談をしなければ従業員は賃金(給与)又は賞与が増えたが減ったかだけに関心が集まり、仮に昇進したとしても「賃金(給与)が増えて良かった」で終わってしまい、昇進に伴い「従来とは異なる役割を果たさなければならない」という認識が欠け、昇進後も昇進前と同じ役割(仕事)しか果たさない状況がママ発生するため、人材がいつまでも育たない状況に陥ってしまいます。結果として、「あの人は長く勤めているから部長さん、あの人は程々長く勤めているから課長さん」の状況に陥り、「役割」「責任」「権限」不在の会社となってしまいます。

今から約15年前(平成20年)頃のことですが、ある会社の就業規則変更のお手伝いをしているときにその会社から「従業員との年2回の面談に立ち会い、感想を聞かせてもらいたい」というご依頼がありました。その会社は東京にも支店(約30名弱)がある会社でしたが、私は「まさか東京出張までして面談はされないだろうから、広島本社の従業員(約40名)面談だろう」と独断し当日お伺いしました。当日、私が面談室に入ると、そこには大画面のモニターがセットされていて、会社の総務部長が「面談は全て有料テレビ会議システムを利用して行います」と言われるので驚愕しました。当時(平成20年頃)は今のようにZoomやLineが無く、メールが普及し始めたもののインターネット環境はまだ十分でなかった頃ですから、私は有料のテレビ会議システムまで使って従業員一人ひとりと面談するその会社の方針に兎に角吃驚しました。その為、会社が期待された私の感想は兎も角として、総務部長との話しは「何故、そこまで面談を重視されるのか?」という点でした。従業員一人当たりの面談時間数は5分~15分程度とそんなに長い時間数ではありませんでしたが、総務部長曰く「従業員に良い仕事をしてもらい、成長してもらうことが会社の繁栄につながります。そして、その為には従業員との信頼関係が一番大切ですから、普段なかなかコミュニケーションできない従業員一人ひとりと面談し、会社がその従業員に期待するコト(役割)を伝え、従業員の考え・思いを訊かせて貰う必要があるから、コストをかけてでも一人ひとりと面談をしています」とのことでした。如何せん平成20年頃のことですから、私は唯々感服するばかりで「面談内容は兎も角として、良いお考えですから兎に角継続してください」とお願いするばかりで、本来のご依頼事項である就業規則の変更作業を続けることにしました。

上記実例の会社のことを思えば、今はZoom、Teams、Lineなどが整備され、費用も格段に安くなっています。また、面談は直接会って話しする方が望ましいと私は考えるのですが、一方では直接会って話しをすると感情移入してしまうこともあるのでテレビ会議を利用する方がお互いに冷静に話せるようにも思えます。どういった手段で面談するかはそれぞれの会社の状況によって決めざるを得ないと考えますが、面談は長い時間でなくても良いのですから、是非、従業員さん一人ひとりと時間を取って、普段話せないようなコトを話せる場を設けて面談されることをお勧めします。因みに、パソコンが余り普及していない会社さんでのことですが、本部の人はパソコンを使用し、従業員はスマホを利用し遠方にある支店の従業員さんとテレビ会議システムを利用して営業上の打合せをされていました。従業員さんとの個別面談も「できない理由探しをするのではなく、できる方法探しをする」のであれば出来る方法・手段が見つかるのではないかと考える処です。