適応障害やうつ病など精神疾患への対応

コロナ禍の中でも、従業員が適応障害、うつ病ほかの精神疾患に罹患し、休業(休職)が必要な場合の会社の対処方法について、しばしばご相談を頂きます。

この場合、ご相談された会社の人は主に休職開始時の対処方法を私に訊かれ、私がその会社の就業規則を元に休職制度について説明し、高尾式メソッドに沿ったマニュアルをお渡しすると、ほとんどの方が安心されます。そして、休業中(特に休業開始時)に会社がどのように対応すべきかについて重点的にご質問されることが多いようです。

しかし、精神疾患が原因で休業を開始したときに一番大変なのは本人が復職を希望し始めてから実際に復職して暫くの間です。

本人が復職を希望したとき、当然のこととして医師による診断書提出を本人に求めますが、主治医の診断書と産業医あるいは自社が判断する本人の状態に違いがある場合、どれを尊重すべきか会社は迷われることが多いようです。

最終的には主治医と産業医の意見を参考にして会社が判断すべきことなのですが、主治医は医学のプロですが職場での本人の仕事のことがよく理解できてなく本人の希望を尊重した内容を診断書に記載していることか多いのに対し、産業医は本人の仕事のことは会社との事前打ち合わせで理解している医学のプロですが本人を継続的に診断していないので、主治医と産業医の意見が食い違うことがシバシバあります。

また、本人が職場復帰した後の暫くは、本人の上司や同僚が本人にいろいろと配慮する必要がありますから、本人が不完全な治癒状態(寛解状態)で、それが比較的長期に及ぶとき、上司や同僚が疲弊していきます。復職後に再発した場合、復職後の職場環境よっては業務上労災として会社責任を問われるリスクがあるからです。

そして復職させる際は、基本的には「お試し期間」を設け段階的に元の職に戻すことをお勧めしていますが、この「お試し期間」の運用が中々難しいのです。

その為、従業員が精神疾患に罹患し休職が必要な場合は、休職開始時のことだけでなく、復職させるとき、そして復職させてから暫くの間どのように会社が対応していくべきか(入口から出口まで)も念頭におきながら、会社として自社の体力を考慮しながら検討されることをお勧めしています。

 

以下は私が体験した一つの事例ですが、

先日、ある会社から「試用期間が終わり、特に問題もないようなので正社員として採用した処、正社員にして1か月経過した頃から遅刻が目立つようになり、3か月目・4か月目には突発で2日~4日間の欠勤をするようになったので、懲戒処分の相談をしたい」というご依頼がありましたのでお伺いし、本人とも面談をしました。面談で「体調不良であれば病院で診断してもらっておく方が良いですよ」とお勧めした処、その後1週間位経過してから本人が会社に医師の診断書を提出し、その診断書には「適応障害 療養のため1か月の休養を要す」と記載されていました。その結果、懲戒処分ではなく私傷病による病気休職を指示することになりました。