緊急事態宣言と雇用調整助成金

生存する日本人が未体験であった緊急事態宣言が解除されました。緊急事態宣言に伴い休業を開始されていた企業や個人事業主も営業を再開され始めたようです。今回はリーマンショックのときと比較すると、直接的には飲食店やサービス業に大きな影響を与えているようです(ただし、メーカーさん等にも間接的な影響はかなりでていますが)

しかし、緊急事態宣言は新型コロナ感染症が拡散するのを防止する為の緊急措置であり、それが解除されからといって営業を再開しても売上が元に戻るものではありません。そして、企業や個人事業主が業績不振により従業員を休業させ雇用調整助成金や緊急雇用安定助成金を利用して休業手当の一部又は全部を助成金として国から補助して貰おうという措置とは必ずしも一体的なモノではありません。

私への相談でも、「緊急事態宣言が解除されたから営業を再開したけれども売上が戻らない。どうしたら良いだろうか?」というご相談が多数あります。

そのとき私はリーマンショックの時の体験を参考にして「お客さまの嗜好・考え・行動パターンがコロナ感染予防措置によって変化したのです。従前と同じやり方・考え方でビジネスを再開しても顧客が変化したのですから、生活必需品を除いて元通りにはなりません。これを機に”顧客の変化を踏まえて新しいビジネスや新しい商品・サービスの提供”を開始すること(新たに飛び立つ為の準備)が必要です」とお伝えしています。

そして「従業員の休業を解除し、売上が無いのに就労させていると人件費だけが企業から流出(キャッシュ・アウト)していきます。それならば、売上の予測を建てながら必要最低限の従業員に就労してもらい他の従業員は休業を継続させる(又は輪番制で一部だけを就労させる)方が、休業手当の一部又は全部を雇用調整助成金で助成して貰えますからキャッシュ・アウトを少なくすることが出来ます。そして、休業中の従業員はただ休業させるのではなく、今まで日常業務に追われて出来なかった教育訓練を行い、新しいビジネスや新しい商品・サービスの提供ができるようになる準備を開始するのが良いのではないでしょうか?リーマンショックのときにも、従業員に教育訓練を行い、新しい商品やサービスの開発だけでなく業種・業態転換していった企業は沢山ありました。そしてリーマンショックの時と違って、今回の雇用調整助成金ではe-ラーニングやスカイプやズームを活用した遠隔地での教育訓練も対象にし、商工会議所等でも有料の教育訓練を無料公開しているのですから、これを上手く利用しない手は無いと考えます」とお話ししています。

卑近な例ですが、昔し山口県の上関に仲間とタイを釣りに行ったことがあります。このとき、タイが中々釣れないので、乗船した漁船の船長さんは船をドンドンと移動しとうとう山口県大島の近くまで移動し、そこでやっとタイが釣れたことがありました。どんなに良く魚が釣れるポイント(船長さんは知っています)があっても、お魚さんの種類が変わったり、海流が変ったりすると、今までの餌や釣り具で魚釣りをしようとしても魚は釣れません。それなのに従来と同じポイントで同じ餌・釣り具で釣りを続けていると、他の魚に餌をとられ成果は挙がりません。

いまの状況は「消費者の嗜好・思考が緊急事態宣言により変化したのだから、新しい方法・やり方で商品・サービスを提供しなければ業績は回復しない」と私は考えます。そして更に、コロナ騒ぎで影が薄くなっていますが、労基法が改正され長時間労働が禁止となり年次有給休暇取得も義務化され、更には日本版同一労働同一賃金(パート・有期雇用労働法改正)により均衡・均等が求められる時代となっています。そうすると、余計こそ従来の考え方・やり方を改めなければ、いま起こっている変化に適応できなくなってしまいます(環境変化に適応しなかった恐竜は滅び、変化に適応した動物だけが生き延びた歴史的事実があります)。故P.F.ドラッカー翁も「企業は変化適応業である」と言われています。変化に適応して行く為に、雇用調整助成金ほか公的機関が用意してくれた各種制度を冷静になって上手く利用することが大切です。そうしなければ「ゆでガエル」となってしまいます。