労働基準監督署はタイムレコーダーを利用して始業時刻と終業時刻を記録することを勧めます。法律は「始業・終業の時刻を記録」することだけではなく「労働した時間数を管理すること」を会社に要求しています。
しかし、私が実感する処では、タイムレコーダーに依存する結果、就労時間数を「管理」しなくなった会社が多いようです。タイムカードは賃金計算で利用するだけで、個々の従業員の就労時間数を管理していない会社が非常に多いのです。その結果、無駄な残業が目立つようになります。ICレコーダーに至っては給与計算専用と考えている会社がもっと多くなります。パソコンを含めた機械類を利用することは大変に便利なことですが、その結果、本来の目的を見失っていては元も子もありません。中小零細企業でよくある事例は、タイムカードを利用しているがタイムレコーダーの初期設定を間違えているので、タイムカードの集計結果が間違っているというケースです。また最も多いのは、仕事を始めた「始業時刻」ではなく「出社時刻」、仕事が終わった「終業時刻」ではなく「退社時刻」をタイムカードに入力しているケースです。
これらの会社で、私が「手書きで始業時刻と終業時刻」を各自が記入し、備考欄には「残業して何の仕事をしていたか」も簡潔に記載させ、それを上司が確認することで、無駄な残業をさせないよう就業時間を管理することを勧めた会社では、かなり良い成果が生まれています。そして、手書きした始業終業時刻記録簿はエクセルに入力して法律要件を考慮しながら集計します。トヨタの改善活動ではないのですが、会社経営を合理化し従業員の残業時間数も削減するためには、会社の仕事と従業員個人の仕事に対する考え方の中に潜在化している「ムダ・ムラ・ムリ」を地道に無くしていくことが必要だと私は考えています。本人は「必要で急ぎの仕事だ」と思っている仕事でも、第三者が見ると視点が変わる為に、そうではない場合が沢山あります。また、仕事の優先順位のつけ方に問題がある場合もありますし、整理・整頓・清掃・躾など5S運動が必要な場合もあります。
その為には、タイムレコーダーに依存するのではなく、手書きすることで仕事の時間とその内容を「見える化」することが急務の会社が多いと思います。有名なPFドラッカーも「自ら一日の仕事の時刻を記録しなさい。そして何に時間が取られているかを明確にしなさい」と教授しています。
最新のやり方としてスマホやタブレットを活用してクラウドを利用する方法もありますが、この方法は後で改ざんできるので、私は余りお勧めしません(便利な分だけ危険が伴う)。
10年位前の事例ですが、ある機械設計会社の営業日報は帯グラフ状にしてあり、上段に時刻を記入し、下段にその時間帯にどの会社のどのような設計図を作成していたかを簡潔に書くようになっていました。そして営業日報をタイムカードの代わりに使用していました。この営業日報をエクセルに入力し、時間数集計と各従業員の仕事内容を上司が確認して原価計算に反映し、上司が各自の生産性を確認していました。ここまでするとほぼ完璧ではないかと私は思います。しかし、接客業や営業職の人たちは顧客次第で残業の必要性が変わっていきますし、この機械設計会社のように全てを営業日報に記入されることは至難の業でしょうから、せめて残業時間中のことを記載させるようにすることをお勧めする次第です。
昔しから「ビジネスは『タイム イズ マネー』」とよく言われます。しかし、この意識がなく、ただ「働けば儲かる」と考えている人たちが多いようです。時間とその内容を吟味して一人1時間当たり生産性を高めることを通じてより良い会社になっていくことが必要であると私は考えます。
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