就業規則についての基本的な事柄なのですが、恰好の事例を体験したのでご紹介させて頂きます。
ある企業の現場責任者が交代しました。前任者が退職した後に、後任者は他企業から転籍して来ましたから、両者の引き継ぎは全くなく、前任者は必要最低限のことだけを現場担当者に引き継ぎしていました。
後任の現場責任者は、「新しい会社の現場責任者に就任したのだから、まず新しい会社の就業規則を精読することが大切!!」と大変に良い心がけをされていました。会社の就業規則はロッカーのファイルに保存されていたものを自分で引っ張り出して読まれていました。その上で私に質問されてきたのですが、問題はここから発覚してきました。
新任の責任者が電話で「就業規則の給与規程で定めてある諸手当と実際に支払われている諸手当が違うのだが、就業規則の変更をせずに諸手当の変更をしたのですか?」というご質問がありました。丁度、その電話のときに私も自分の事務所にいましたから、その会社の就業規則を開いて確認した処、変更届は適切に処理され、現在有効な給与規程に従って賃金の諸手当は支給されていることが分かりました。そのため、電話で新しい現場責任者が読んだという就業規則の施行日を問い合わせた処、それは変更前の古い就業規則であることがわかりました。この新任の現場責任者は「就業規則が重要なもの」という理念的なことは理解されていましたが、実際に就業規則の運用をしたことがなく、就業規則をどのようにして用いるべきかは未体験であることがわかりました。
そこで、私方で保管しているこの会社の就業規則のコピーを再度コピーして持参し、それを読んでもらうことにしました。
私の記憶では、前々の現場責任者は就業規則を事務所内に掲示していました。しかし、今回就業規則のコピーを持参した際にそれを確認した処、掲示されていた場所から無くなっているのです。現場の人に訊いた処、どうも前任者が邪魔になるというので処分してしまったようなのです。もしも前任者が処分していなければ、今回のようなことは防げたと思います。また、処分してしまっては「従業員に周知させている」ということはできず、労基法違反にもなってしまいます。
また、一般的に従業員に周知させるための就業規則はコピーを掲示(またはイントラネットにUP)し、就業規則の原本は総務が保管していますが、就業規則を部分的に変更した時に整理・整頓することなく、この原本がただ収納てあるだけだった為、今回のような混乱が生じたものと考えます。これではとても周知させているとは言えない状態であり、もし万が一何かトラブルが発生したときに就業規則を根拠として対処し得なくなります。整理・整頓とは、「必要となったときに、いつでも使えるように保管・管理しておくこと」ですから、単に収納保管しているだけでは整理整頓して管理している状態とは言えません。
普段は余り縁がないかもしれない就業規則かもしれませんが、人事労務管理の基本となる重要なものですから、チャンと普段から整理整頓して保管管理しておきたいものです。また、就業規則は労基署に届け出たときから有効になるのではなく、従業員に周知したときから有効になるものですから、当然のこととしてこの会社の新しい現場責任者に就業規則のコピーを事務所内のどこかわかり易い所に掲示しておくようにアドバイスしました。
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