年次有給休暇一斉付与への切り替え

年次有給休暇(以下、「年休」といいます)の5日間取得義務が労働基準法(以下、「労基法」といいます)で義務付けられてから約1年半が経過しました。

年休を法律通りの付与する場合は、入社して半年経過した日の翌日に初回の付与を行い、その日から1年経過する期間に8割以上の勤務をしている場合は、1年経過した日の翌日に法律に従った年休を付与する必要があります。

今回ご相談頂いた会社は、従業員数が約100名弱の企業ですが、従来は法律通りに入社日に応じて年休を付与されていました。そして、年休の残日数は給与ソフトで管理され、5日の取得義務の状況は給与ソフトが対応していないのでエクセルで別表(年次有給休暇管理簿)を作り管理されていました。

しかし、管理をしていた総務担当者がギブアップしたのです。昔しと違い途中入社が増えた昨今では入社日がバラバラとなり、年休5日の取得義務をエクセル表で管理することが難しいこと(時間を取られ過ぎるコト)に気づかれたのです。

その為、年休を全社で一斉に付与するやり方に切り替えることになりました。

年休付与日を変更する際には、年休を前倒しで付与する必要があることは皆さんご存知ですが、これ以外にも注意しなければならない点があります。

一般の人は「年休残日数は最高40日」と思い込んでいることに原因がありますが、法律にそんなことは書いてなく、法律では「時効により2年で消滅」することだけが決められているだけなのです。

その結果、例えばこの会社が今年からは毎年9月1日を一斉に付与する日と決めたとして、入社日が平成26年6月11日の正社員のことを考えると、

①平成26年12月11日に10日付与・・・平成28年12月10日で時効消滅

②平成27年12月11日に11日付与・・・平成29年12月10日で時効消滅

③平成28年12月11日に12日付与・・・平成30年12月10日で時効消滅

④平成29年12月11日に14日付与・・・令和元年12月10日で時効消滅

⑤平成30年12月11日に16日付与・・・令和2年12月10日で時効消滅

⑥令和元年12月11日に18日付与・・・令和3年12月10日で時効消滅

⑦令和2年9月1日に20日付与<一斉付与>・・・令和4年8月31日で時効消滅

⑧令和3年9月1日に20日付与<一斉付与>・・・令和5年8月31日で時効消滅

となります。お話しを単純にするために、この人が全く年休を取得してないと仮定して上記の⑤~⑧を元に「時効消滅2年」を前提にした年休の残日数を計算すると

(a)令和元年12月11日から令和2年8月31日の間は年休残日数は34日間

(b)令和2年9月1日から令和2年12月10日の間は年休残日数は54日間

・・>平成30年12月11日に付与した年休16日は時効が到来してないので消滅して無い

(c)令和2年12月11日から令和3年8月31日の間は年休残日数は38日間

(d)令和3年9月1日から令和3年12月10日の間は年休残日数は58日間

・・>令和元年12月11日に付与した年休18日は時効が到来してないので消滅して無い

(e)令和3年12月11日からの年休残日数は40日間

となり、この人は年休を全く取得して無いのに年休残日数は増えたり減ったりしていきます(特に、一斉付与に切り替えた直後だけでなくもう一度増えることがある場合もあることに注意が必要です)。

以上のような為に、この会社用に今後2~3年間における各従業員さんの年休残日数推移図を作成し、年次有給休暇管理簿も作成し直して担当者のミスを防ぐことにしました。