働き方改革の「手段」が「目的」になっていませんか?

2年程度前から各社で「働き方改革推進」のお手伝いをさせて頂いています。

特に今年になってからマスコミが労働基準法ほかの働き方改革諸法案を積極的に取り上げていますから、大企業や中堅企業だけでなく中小・零細企業さま各社とも関心が高まり、徐々に実行され始めているようです。そして、就業規則を変更して勤務間インターバル制度を導入したり、ノー残業デイを設定したり、年次有給休暇取得の促進等を始められています。

しかし、私が痛感するのは、ノー残業デー、勤務間インターバル、年次有給休暇取得促進ほか、働き方改革を推進するための「手段」が「目的」となってしまい、それらの制度を新たに導入したり、残業時間数を削減するために新たな設備・機器・ソフトを導入したけども、仕事のやり方や仕事に対する考え方は従来通りで変えようとしない為、結果として①残業時間数(時間外労働と休日労働を含む)が減らない、②制度だけを優先して実行した結果、仕事がドンドンと遅延していくという現象が発生している企業が多いということです。

一般的な日本人が行う仕事は不思議なモノで、特定の作業の効率をUPし改善して時間が空くと、そこに新たな仕事を入れてしまい、結果として働く時間数は従来と変わらず長時間労働のママとなってしまう場合が多いようです(元々、日本的風習は農耕民族から派生しているから、この傾向は否めません)。

私が各社のお手伝いをして必要と考えることは、

①全社ベースで仕事と作業の流れを把握して全体最適を図ること

②各従業員(特に中間管理職)が、仕事と作業に関する「時間」の意識を持つこと

③人間が行う「仕事」と単なる「作業」とを区別すること

④無駄な仕事や作業は止めること

⑤以上を実行するために、「5S運動」を徹底すること

が必要であるということです。

有名なPFドラッカー翁は「新たなことを始める前に行うべきコトは、従来からやっていたコトの何を止めるかを最初に決めること」と看破しています。

過去のバブル崩壊のとき、あるいはリーマンショックのときに、各社は生き延びるために仕事の洗い直しをせざるを得ませんでした。そして、あれからかなりの年数が経過しています。その結果、会社(組織)の仕事や作業には、かなりの垢が溜まっている筈ですから、まずはその垢を洗い流すことが必要と考えます。怖いのは、この垢について本人は無意識化してしまっていますから、気づかない場合が多いということです。そして、今回必要とされているのは、新たな機械・機器・ソフトや制度を導入したりするだけではなく、バブル以後やリーマンショック以後の「垢」だけでなく、戦後の高度経済成長期から日本の企業に根付いてしまっている「垢」もふるい落とす必要があると考えます。