今年中に準備した方が良いこと

先日、木村恵子弁護士を講師とした労働関係諸法令に関する研修会がありましたので、そのポイントを村上流に纏めてご案内させて頂きます。

 今の政府は「日本再興戦略」の主軸に「働き方改革」を掲げ、労働関係の諸法令を矢継ぎ早やに改正し始めています。因みに、すでに改正・新設施行された法令としては、

 ① 労働契約法・・・・・・・平成25年4月1日改正・施行(平成30年から実務的効力が発生)

 ② パートタイム労働法・・・平成27年4月1日改正・施行

 ③ 労働者派遣法・・・・・・平成27年9月30日改正・施行(平成30年から実務的効力が発生)

 ④ 女性活躍促進法・・・・・平成27年9月4日改正・施行

 ⑤ 労働安全衛生法・・・・・平成27年12月1日改正・施行(ストレスチェック制度)

 ⑥ 不正競争防止法・・・・・平成28年1月1日(営業機密の保護強化)

 ⑦ 障害者雇用促進法・・・・平成28年4月1日改正・施行

 ⑧ 若者雇用促進法・・・・・平成28年4月1日施行

 ⑨ 職業能力開発促進法・・・平成28年4月1日改正・施行(ジョブカード制度促進)

 ⑩ 同一労働同一賃金促進法・・・・・平成28年9月16日施行

 ⑪ 男女雇用機会均等法・・・・・・・平成29年1月1日施行

 ⑫ 育児介護休業等に関する法律・・・平成29年1月1日改正施行

 ⑬ 雇用保険法・・・・・・・・・・・平成29年1月1日改正施行(被保険者対象年齢の拡大)

 など、法改正が目白押しの状態で「知らない間に法違反の状態に陥っていた」ということも考えられ、更には、

 ⑭ 同一労働同一賃金ガイドライン(案)

 ⑮時間外労働の上限規制について(内閣官房働き方改革実現推進室事務局案)

などが公示され国会も紛糾していますが、今後も労働関係諸法令の改正は続くものと予測されています。このような状況においては、労働諸法令の改正・新設に関して巷の噂(特にマスコミ)に翻弄されて先取りする必要はなく、

「バスに乗り遅れないようにすること。事案によっては、バスの出発時刻に間に合うように準備を始めておくこと」

が大切と考えます。

 そこで、今年中に「準備を開始しておいた方が良い事項(予めの準備期間が必要であろう事項)」をピックアップしてみました。

(A) ⑮「時間外労働の上限規制について」に関する準備

   長時間労働となる企業体質がある場合は、その仕事のやり方を改革して、残業時間数を削減

         する必要があります。

    特に、従業員が会社命令を受けることなく自分の仕事を完遂するため自発的に残業・休

          日出勤をする体質がある企業の場合は、従業員意識の改革が必要となります。「従業員

          が勝手に残業していた」という言い訳は法的に通用しません。残業代を計算するために

          タイムカードを打刻させているのではなく、会社が従業員の健康管理を行うために時間

          管理を行うという意識の醸成が必要です。

(B) ①労働契約法に関する準備(平成30年4月1日から該当者が発生する可能性があります。但し、

        1年を超える有期雇用契約期間の場合はそれ以前から)

   (a) 有期契約従業員の人数と契約年数を正確に把握しておくこと

     (b) 60歳以上の有期契約従業員を無期契約の対象外とする届出(2種届出)を提出してお

              くこと

   (c) 短時間勤務従業員や有期契約従業員に対する合理的でない不利益取扱い(賞与、退職金、

              休職制度ほか福利厚生面)を再検討し、必要な場合は就業規則も変更しておくこと

         (d) 無期契約従業員用の就業規則の作成

       (e) 無期転換申込書を予め準備しておくこと(法律では口頭による申出でも良いことになっ

             ていますが、口頭ではトラブルの源となります)

(C) ⑩同一労働同一賃金促進法 と ⑭ 同一労働同一賃金ガイドライン(案)に関する準備

    正規社員と非正規社員とがいる場合は、

     (a) 正社員、有期契約従業員、短時間勤務従業員のそれぞれの役割・権限・職務の内容等

              を整理し明記しておくこと   

   (b) 基本給、諸手当、賞与、退職金等が「何に対して」「何のために」支給されているの

             かを明確にしておくこと(「責任の程度が違う」という程度の把握では不十分ですから、

             もっと具体的・客観的に)

(D) ③ 労働者派遣法に関する準備(ここでは派遣先企業に関することだけを記載しています)

   派遣に関する事業所単位及び個人単位の抵触日を把握し、事業所単位の抵触日に関する過

         半数労働者代表(労働組合)からの意見聴取の準備

取り敢えず、現段階では以上のことに関する準備は開始されていた方が良いと考えます。