育児休業の代替要員確保助成金 と 裁判の判例

育児休業を取得する従業員が発生しその代替要員(代わりとなる人)を雇い入れた場合に一定の要件を満たした場合は「代替要員確保助成金」が貰えます。

ただし、その要件の中に「育児休業を取得する従業員に役職手当が支給されている場合は、代替要員に対してもそれに相当する額が支給しれていること」というのがあります。私は、この要件は少々変なのではないかと考えます。

一般の中小企業では課長、係長又は主任職の従業員が育児休業を取得を希望した場合、その人の仕事のうち一般的な仕事は他の従業員(代替要員を含む)が引き継ぐけれども、その人の管理者としての仕事はその上司が育休中は代行する場合が多いようです。新たに有期契約で雇い入れた代替要員が、入社後直ちに役職者に就任することは無いと考えます。こうすることで、育児休業を取得した人が原職に復帰できるようにしています。

また昨今有名になった広島高裁の育休に関する判決(最高裁差戻判決)では「育休後に降格したまま元の役職に戻さなかったことを理由に、遡って役職手当を支払うこと」とされています。中小企業がこの判決に従おうとすると、役職者が育休中はその人の役職は空席にしておかなければならないことになります(そうしないと、今回の裁判例のように役職手当を2重に支払うことも有りえます)。また、もし代替要員に相当する人に育休中の従業員の役職を命じた場合、育休終了後は同じ役職につく従業員が2名発生することになり、一般的な中小企業ではどちらかの役職を解任せざるを得なくなる場合が発生し、これでは労働条件の不利益変更(労働契約法)に該当してしまいます。

私は広島高裁の判例が少々変であると考えていますが、もし判例主義でいくのであれば助成金の要件を修正する必要があるのではないかと思います。