中国の古いコトワザ

企業経営においては、シバシバ、兵法の考え方を重視します。

そして中国の古い諺(コトワザ)に「どんな戦闘計画も、敵に遭遇すれば変わる」というのがあります。非常に意味が深い諺だと私は考えました。

何故なら、戦闘は生死を掛けて戦いますから戦闘計画は色々な事態を想定して立案する筈です。しかし、敵に遭遇すると予期し得なかったようなことが必ず起こるから、当初の戦闘計画を変更せざるを得なくなるという意味があり、

①「変更せざるを得なくなるから、当初の戦闘計画を立案することは無駄である」という意味ではなく、

②当初に戦闘計画を立案しているから、現実に発生しているコトと計画の違いを比較することが出来るのであり、当初計画がなければ現実に発生しているコトを何モノとも比較することが出来ず、ただ現実に発生したコトに振り回されながら対応していくことにたる。

③そのため、当初に計画を立案しておくことは大切なことであるが、当初計画は将来の変更を前提にして立案することが大切である(余りにも緻密な計画をたてようとしても時間の無駄となることが多い)。

そして一番大切なことは、「戦闘」という言葉を使っており「戦略」という言葉を使っていないということです。戦略とは「大きな方向性」を示すものであり、戦闘とは「戦略を踏まえた具体的な対策」を意味します。そして、ここでは敵(現実・顧客)に出会うことにより「戦闘計画」が変わるのであり「戦略」が変わるとは言っていません。戦闘計画を立案するためには戦略が必要であり、戦略を立案するには「自分が何をしたいのか(目的)」が必要となります。

さて、一般企業でシバシバ「計画はどうせ変更せざるを得なくなるから、計画を立案するのは無駄である」と言い「現実に適応するために色々なことを行っている」と言う経営者が居ます。しかし、このような経営者を観察していると、得てして10年経っても10年前と同じことをしている場合が多いようです。それは、本人は発生した現実に一生懸命に「適応」しようとして日々努力しているのですが「方向性(戦略)」が定かではないために、結局は現実に振り回され続けているに過ぎない(迷走状態)コトが多いようです。

特に、企業の赤字状態が続いて事業再生が必要となった場合には上記の考え方が大切です。倒産一歩手前に陥ると予期せぬ事態が色々としかも次々と発生してきます。経営者はその事態に上手く対応して生き延びようと必死になります。しかし、ここで大切なことは、必死になって日々「自分なりに努力する」だけでは不十分であり、一時、冷静になり、企業としての「目的(目標ではない)」とその目的を達成するための「戦略」を考え、「戦略」を踏まえて「戦術」を計画として書面に書き出してみることが大切です。

私は自分の会社が倒産したときに、このようなことをスる心のユトリがありませんでした。その原因を考えてみると「企業経営に対する相談役」が私には居なく、全てを自分が考えざるを得ないと思い込んでいたことに原因があるようです。経営に関する助言をしてくれていた父親が他界し、有能だと考えていた従業員に相談しても企業経営のコトになるとダメであり、親友といえども会社経営のコトとなると実態把握ができないので真剣な相談相手にはなり得ない、ましてや妻は会社の仕事のことは分からず、・・・・といった状態でした。しかし、倒産した直後、義父(別会社の経営者)に報告するためその自宅を訪問したときに「何故もっと早い時期に相談しなかったのか!!」と叱責されました。このような自分の苦い体験を活かし、今はこのような相談にのることを天職にしている次第です。