大会社から中小企業に転職した取締役からの相談

大阪の上場会社で取締役を務めていた人が、ご自分の老後のことを考えて約1年前に広島の中小企業に取締役として入社しました。その人は元の会社で総務関係を担当していたというので、私は1年間ほど様子をみていましたが、この人の"やること"や"考え方"がどうもギコチナク、会社の中でも浮いてしまっているようなので昨日は相談に応ずることになりました。

会話を始めた最初の頃は、自分の過去の成功体験を誇らしげにその人は話されていましたが、私が「そうですか・・・それは素晴らしいことですネ!! でもそれは一部上場会社の中にいた貴殿だから出来たことではないでしょうか? 一部上場会社では人財も揃っているし、機材も揃い、しかも過去のノウハウの蓄積もあります。しかし、ここは地方の中小企業です。従業員全員に一人ずつパソコンが配られている訳ではありません。また大企業のように分担して仕事を進めようにも人財が不足していますから、どうしてもご自分が中心となりあらゆることを配慮しなければならなくなります。そして、一番大きな違いは一部上場会社の社長は代表取締役(専任経営者)ですが、地方の中小企業の社長はオーナー(株主兼経営者)であり、その考え方の違いには大きなものがあります。その中で貴殿が果たすべき役割は自ずから異なるものとなるのではないでしょうか?」とお話しした処、その取締役は暫く考えられていたようでした。

その上で私は

「昔しの格言で"人の成功は他人に助けて貰って初めて達成されている"と言います。貴殿の過去の成功は貴殿の過去の環境の中で初めて成し遂げられたもので、環境が変わり貴殿に対する周囲の期待が変わった今では、貴殿の果たすべき役割は過去のものとは違うのではないでしょうか?」

「大企業と違い中小企業では色々なモノや人財が揃っていないのが当たり前のことです。無いモノねだりをするよりも、今ある環境の中で、今あるものを最大限に活用して、今よりも少しでも良くする方法を考え実行していくことが大切ではないでしょうか?」

とお話しさせて頂きました。

そうした処、その人は「村上さんが言おうとしていることは良く理解できました。実際、この1年間の体験を通じて、自分がいかに"わかったつもり"になっていたが"本当は分かっていなかった"ことが良く分かった次第です。月曜日から考え方を変えて仕事をしてみようと思います」と言われました。

さて、この人が今後どのように変わられるかが楽しみな処です。