農業法人の労働保険の取扱い

飲食業を営む顧問先企業が、国のアグリビジネス推進の動きを得て、広島市の隣町の東広島市で農業を営み始めました。

この事実を会社から連絡されたとき、私は「ヤレヤレ、今度は農業にチャレンジするの? 農業は労働保険では飲食業(一元先)と違い二元適用先だから手続きが煩雑になるのだけどナ~!!」と思いました。

そして、その手続きを具体的に行うために、労働基準監督署に打つ合わせに行きました。広島市で農業を営む企業は皆無らしく、労働基準監督署の職員も資料を調べながら「農業は二元適用先だから、労基署とハローワークに設置届と概算保険料申告書を提出してください。ハローワークに提出する設置届の詳細はハローワークで訊いてください」ということでした。

そこでハローワークに行って尋ねた処、

①企業の従業員規模が約800人の会社が、隣町の東広島市で2~3人で農業を開始しても、農業に対する指示命令が広島市の本社から全て出ている為、農場には事業場としての独立性がなく、

②その農場でできた農産物は全て自社で消費し、市場で売ることが無い

のだから、二元適用事業所として農場を届け出る必要はなく従来の企業(一元適用先)の一部門として処理すれば良いのではないか? 詳しくは労働局徴収課と打合せをして回答したい。ということになりました。労働基準監督署とハローワークの見解が真っ向から対立してしまったのです。

その結果、今回の場合は従来通り一元適用事業所の一部門(=包括的事業所)として取り扱えば良い、労基署には労働局徴収課から連絡をしておく、ということになりました。これで私も今後の事務量増加が防げて大助かりです。

しかし、永年、労働保険料の事務をやっていますが、「知っているつもり」で「実は知らなかった」ことを痛感させられました。特に、二元適用事業所に関しては、どうしても建設業を連想してしまうので賃金は請負金額に一定の労務比率を掛けて試算する方式を連想し、農業法人の場合はどのようにして計算するのだろうか?と勝手な想像をしてしまっていたのです。農業は二元適用事業所でも従業員に実際に毎月支払う賃金を集計して労働保険料を計算すればよいこと、即ち二元適用事業所≠請負金額×労務比率であることに気づかせてくれたことが大変に勉強になりました。また、今回は労働局徴収課が「包括的事業所」という判断をしてくれたので、新たな事業所設置届も出さなくて良くなったので大助かりです。