聴手の理解度が大切

ある会社の社長と日曜日に仕事のお話しをしました。その話しが終わって帰る前に社長の机の上を見ると、ハローワークの求人票が散乱していたので、帰り際にそのことについてもお話しせざるを得なくなりました。

社長から最初にお聴きした処、「先日、ハローワークで求人申し込みをしようとしたら、うちの会社は一度に9枚の求人票しかだせないと言われたので、日曜出勤して求人票を作成し直している処だ」ということでした。ここで私は「アレ? 何で9枚しか出せないの? そんな制約は無いはずだがナ?」と思い、そのことを伝えて、社長からハローワークでの経緯を聴きました。

社長が作り直した求人票は、1枚で未経験者から管理職までの人を募集する内容となっており、その結果、給与予定額も月15万円から月50万円までと幅広いものになっていました。これでは会社がどんな人を募集しようとしているのか不明確で、応募しようとする人も困ってしまいます。

社長の話しはその他の点でも色々と不明な点があるし、ハローワークの手続改正があったかも知れないので、早速ハローワークに確認しました。その結果は「本支店の地図は全部で10カ所しか登録できないが、求人票の枚数制限は無いです」という回答でした。そして、登録できる本支店の地図10枚のうち1枚は"面接場所・就業場所はお問い合わせください"と記載して使用しますから、10枚-1枚=9枚です。

要するに、この社長は「地図を登録できるのは9枚です」という説明を「求人票は9枚までしか掲示できません」と誤解したのです。誤解した内容を再確認しなかった社長にも責任はありますが、説明したハローワークの職員も社長の理解程度を再確認しなかったことにも非があると私は考えます。コミュニケーションとは「言い手が何を言ったかではなく、聴き手がどう理解したかによって成立する」という名言があります。プロであるハローワークの職員は素人である社長に理解内容を再確認する必要があったのではないでしょうか?

しかし、この会社はお店が20店舗あり、各店で3種類の職種を募集しようとしていましたから、20店×3店=60枚の求人票となります。60枚の求人票を作成する労力は想像を絶するものがありますが、求人の必要性を考え、また採用後のトラブルを防止する為にはこの労力を惜しむ訳にはいきません。

先日も「1週44時間が所定労働時間の特例業種の社長がハローワーク職員の指導で求人票を掲示し募集した結果、1週40時間の人を採用せざるを得なくなり、土曜日出勤をさせられず既存従業員からクレームが発生している」会社の相談がありました。このときも、最終的にはその社長の早合点に原因があるということになりますが、求人内容と社長の真意・会社の意図とをハローワーク職員が再確認せずに安易に求人票を受け付けたことに原因がありました。

結論からすると、ハローワークの職員の質が低下していると私は考えます。"人間の発揮する力=考え方×スキル×熱意"といわれますが、この「考え方」の部分が間違えている職員が増えているようです。プロである職員は「素人を相手に説明・指導する際には、相手の立場を考え、相手の理解度を再確認しながら説明・指導すべき立場にある」のではないでしょうか?それが出来ないのであれば、DVDでも使って説明した方がよほど益しではないかと思います。