第6回大学連携特別講座

師走です!! 毎年12月初旬は諸届が多いので、顧問先を走り回って書類を集めることが多いのですが、今年も走り回っています。

しかし、「忙中閑あり」と昔しからいう様に、仕事の合間をぬって昨日は第6回大学連携特別講座に出席し気分転換を図りました。

第一講座は「国際経営戦略における企業家活動及び経営組織」講師は広島市立大学:金泰旭教授でした。企業の社会的責任が問われ、企業の果たすべき役割が少しずつ変化して、今では社会貢献が企業の役割の一つに付け加えられたような時代となっていますから、私は非常に興味がありました。しかし、講義内容は失望・・・、失望・・・でした。教授が自ら関与した「工事現場の防音壁に市民がペイントする事業内容の紹介」に終始し、イベント実行者としての視点からの講演であり、企業が果たすべき社会貢献の意義や意味並びにその果たし方などとは無縁のものでした。12月の貴重な時間を割いて聞きに来たのに、気分転換になるどころかストレスの原因となるような講座でした。

第二講座は「ポスト工業化と組織・人事改革」講師は同志社大学:太田肇さんでした。こちらの講座は第一講座と比較すると、少しはマシな内容でした。

①IT化・ネット化により仕事に求められる能力が根本的に変化した、

②コンピューターでも出来る知識社会から人間にしかできない知恵社会への変容に人間は対応していかなければならない、

③マネジメントは組織における「統合」を図るが、多様化が進展した社会では「組織分化」による多様性への対応が求められている。

(ここで私は少々異論がありました!! 何故なら私の大学の卒論は「組織の分化と統合」であり、分化と統合は時代と伴に繰り返され・揺り戻しが起こり、その都度レベルアップしていく、というのが私の持論だからです)。

④①~③のために、欧米と同様に「成果」で人を評価をしなければならない時代となった。

(ここでも異論です。これは私の専門分野のお話しです。日本人は欧米人と比較すると狩猟型民族ではなく農耕型民族であり、集団で行動することを嗜好します。そして集団で行動する場合には、成果も大切ですがプロセスも大切です。成果だけを評価するだけでなく、そのプロセスも評価をすることで、集団組織に対する貢献度を評価することが大切です。そして更に、個人の成果を評価することも必な場合がありますが、日本人の場合はチームや集団の成果を評価することが個人の成果を評価するよりも現時点の日本の会社組織では大切である、というのが私の持論です)。

上記①~④を前提として、現在の会社組織の問題点として、

(a)講師は「会社組織が一元的序列構造(縦社会)となっていること」「ミドル層が不要であること」を指摘されていました。

ここで私はまた異論です。バブルが崩壊してミドル不要論が謳歌した時代もあったけども、いまは寧ろミドル再教育論(日本の会社はミドル層で形成されているのだから、ミドル層を再教育して、もっと有用なミドル層を育てることの必要性)が謳歌し始めている時代です。私は「シンプル イズ ベスト」が信条であり、激変する社会環境に会社が対応する為にはフラットな組織が好ましいという考えに変わりはありません。しかし、現場の全てがトップに直結してしまっては、トップは時間が足らず心身が持たず、その役割は果たせなくなってしまいます。そのためにミドル層は必要であり(この場合はトップの分身)、また現場の各チーム・部所のリーダーとしてのミドルの役割(現場の代表者と他部門との調整者)も大切です。この必要性を満たしながら、如何にしてスリムな組織づくりをしていくかが腕の見せ処です。年功的なミドルは不要であり、実力主義に基づき会社組織に貢献するミドルが必要な時代となっていると私は思います。

(b)講師は「集団主義による人事評価の弊害を取り除くことが必要であること」を指摘されていました。

ここでも私は異論です。既に個人の実績を元に評価する方法が日本人或は日本の企業には不向きであることが証明された過去20年間の歴史があります。個人主義が台頭しつつある昨今ですが、それに伴い精神疾患(うつ病等)に罹患する従業員が増えている現状、家庭が核家族からアメーバー家族へと変容し家族感が乏しくなっている現状、そして日本人は西欧人と異なり狩猟型民族ではなく農耕型民族であること等々を考えると、私は成果はチーム・集団で評価し、個人はそのチーム・集団への貢献度で評価すべき時代が到来したと思っています。

(c)講師は「各自の職務を明確にすること」を指摘されていました。

この講師の考えには私も一部同感です。しかし、私は「職務(何をするか)」を明確にすることではなく、「役割(何を成果とするか=目的・目標)」を明確にすることが必要であると考えています。

(d)講師は「人事部主導による異動から自己申告制による異動に変えるべきこと」を指摘されていました。

この点に関しては私も講師に同意見です。しかし、日本の企業の場合には法律で長期雇用を前提としていますから、また歴史的に見ても、異動は「教育訓練の一環」としての要素も多分にありますから、更には「人間は自らのことが一番分かり難い」「宝玉も磨かざれば石の如し」という人間の特性を考えると第三者である人事部が教育訓練のために異動させるということも必要なことだと考えています。

(e)講師は「固定的な始業・終業時刻を定めることによる勤務時間制度の弊害」を指摘していました。

この点は正に社会保険労務士としての本業の世界です。講師が言うフレックス・タイム制、裁量労働制等は現在の労働諸法規定によるものの場合、非常に実務上で使い難く、労働諸法

を遵守しようとすると始業・終業時刻を固定的に定めた運用とならざるを得ない点が多いことを私は指摘したいと思います。

(F)講師は「オフィス環境の改善も必要」と指摘していました。

この点は私も同意見でした。そして講師が指摘した「同質性を基本にしたチームワークから、異質性を基本にしたチームワークへ」の転換が必要という意見には大賛成でした。

(G)講師は「金銭的だけでなく、その他の方法ででも"認められる機会"を増やすことが大切」と指摘していました。

この点も私は同意見でした。信賞必罰を明確にする、罰が金銭的懲罰に限られないように賞は金銭だけとは限らない、そして賞罰はタイミングが大切である、というのが私の経験に基づく持論です。

第一講座は兎も角として、第二講座は是首できる部分あり、またそうでない部分もあり、面白く聴くことができました。

しかし、前回の第5回と今回の第6回の講座を併せて考えると、昔しは大学の講座というと、幾多の実例を経て理論化されたものが教授されていましたが、この講座では講師の私体験に基づく私論を講演する場のような気がします(講演するには講師の体験数が少な過ぎる)。これじゃあ、街角で開催されるセミナーと大差ないというのが私の感想です。