懲戒処分と懲戒解雇

懲戒処分の対象となり得る出来事が発生した会社の取締役会にオブザーバーとして出席しました。

取締役会では色々なことが協議されましたが、私がお話しをお聴きしていると、どうも取締役のみなさんは「懲戒処分」=「懲戒解雇」という前提で協議をされているようでした。それぞれの取締役が意見を述べるときに「懲戒」という部分だけが聴き取れ、「処分」又は「解雇」という部分が聴き取れないことが多いのです。これでは、懲戒処分内容を検討する前に結論は懲戒解雇と決めつけているようなものです。私は取締役会や懲罰委員会の議事録を後日作成する際にテープ起こしをすることがありますが、語尾が明瞭に録音されてなく議事録作成に苦労することはよくあります。また、労働問題が初体験で、就業規則も十分に読んてなく、懲戒処分の検討に不慣れな取締役の方々にとっては「極端に悪いことをした」=「解雇する」というイメージが強いようなのです。

そこで私は「懲戒解雇するか否かの協議をする前に、懲戒処分の対象として協議するか否かを協議することがこの取締役会で最初に必要なことです。この会社の規則によると、懲戒処分には、懲戒解雇以外にも、降格、出勤停止、減給、譴責などがあります。犯した罪と懲戒内容の軽重を考えて、この会社では取締役会で懲戒処分内容を決定すべきことです。そして、懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も重たい処罰で、十分過ぎる位慎重な調査が必要です。」と説明せざるを得なくなりました。

ほとんど就業規則を読んだことがなく、また労働諸法を理解されていない方々の中には、懲戒処分=懲戒解雇と思い込んでいらっしゃる方々が沢山いらっしゃるようです。

そして特に注意しなければならない言葉は、「退職勧奨」「普通解雇」「諭旨解雇」「懲戒解雇」です。「退職勧奨」と「普通解雇」は懲戒処分ではないこと、「諭旨解雇」と「懲戒解雇」は懲戒処分の一部であり、「諭旨解雇」は言葉通り「本人が侵した違反を本人に諭して、もし本人が反省して辞表を期限内に提出すれば懲戒解雇するのを避けよう」とするものです。どの言葉にも本人が失職する「退職」とか「解雇」とかがついているので会話の中で勘違いも生じ易いのです。

全く初歩的な説明で取締役の皆さんにとっては失礼な説明であったかもしれません。しかし、大切な会議で語尾が明瞭でなかった為に、各自の思惑も交じって誤解を生じ、会議が思わぬ方向に進行し始めてしまうことはよくあることです。

実際にこの取締役会でどのような話し会いがあったのか、どのように決定したのかは守秘義務があるためブログには記載できませんが・・・・・。