セミナー「ビッグデータ活用によるモノ造り革新」

昨晩19時から20時30分まで、県立広島大学主催のサテライト・セミナー「ビッグデータ活用によるモノ造り革新」があると聞いたので、夕涼みがてら出席してみました。

まず驚いたのは、会場となった県民文化センターの変貌ぶりです。ここは偶に研修会・セミナーが行われるので利用したことがあったのですが、5・6階が昔しと違いサテライト会場となっていました。サテライト(衛星放送)によるセミナーは商工会議所で偶に受講していますが、直ぐ近くの県民文化センターもサテライト会場に変容していたことに驚き、また最近はここで研修会が開催されない理由もわかりました。でも、この方が地の利を生かした使い方のような気がしました。知らない間に街は変わりつつあるンですネ。しかし、残念ながら研修会は、サテライトを利用せずPCのパワーポイントを使用した内容でしたが・・・。

さて、本題の「ビッグデータ活用によるモノ造り革新」ですが、少々失望しました。メインは、マツダのスカイアクティブが如何に最新の考え方に基づくものであるかをマツダ㈱パワートレイン技術部の人がパワーポイントで説明されました。エンジンの主要部品のそれぞれに2次元バーコードをつけて品質保証と生産効率化に役立てようとされたわけですが、1つのエンジンで約1万のデータが蓄積されますから、年間生産台数を考えると確かに膨大なデータ量になると思います。しかし、この程度のデータは流通業では既に数年前から活用しようと色々な試みがなされていますから、果たして敢えて「ビッグ・データ」と呼ぶにふさわしいものであるか否か、私は疑問に思いました。そして、大切なことはデータ相互の相関性を調べ、それを如何に活用するかということだと私は思うのですが、その点はほとんど語られず、生産方式の改革点の説明に主軸が置かれていました。確かに、生産する人と開発する人が開発初期段階から膝を交えて開発し始めることははずらしいことであり、また各エンジンの部品で「共通化すべき部品」と「フレキシブルに対応する個別部品」とを選別したうえで、お客様にとっての新しい価値の開発をすることも素晴らしい発想です。また更に、機械・冶具・解析ソフトは最初からはオリジナルのものを使わず、凡庸性の高い一般のものを使い、それを社内でカスタマイズしていき改良する、そうすることで、それらがその後も社内で進化させることもできるように進化性を確保するという考え方も素晴らしいものだと思います。その結果、エンジンの生産ラインを混在生産方式に切り替えることができ、生産効率を高めることができたということも素晴らしいことだと思います。

しかし、私が一番関心のあった「データをどのように解析し活用しているか?」という説明はどうなったン? と、どうも肝心な部分が尻切れトンボになっているような気がしました。同様のことは、会場から「ビックデータとはJRのスイカ、インターネット・マーケット、チャットやメールなどの一般的かつ膨大な量のデータを意味するものであり、一企業での膨大なデータ量を意味するものではないのではないか?」という質問でありました。

そして、私の本音では「自動車メーカーでは、今まで組立工程のデータは保管していたが、各部品はトレーサビリティが確保されていない無い状態であったこと」に驚きました。

そして更に、ガソリン・エンジンの開発のお話しでしたが、この講座は「マネジメント」に関する研修会ですから、「環境保護意識の高まりから、時代の流れはガソリン車から電機自動車や水素自動車に傾きつつあるのに、マネジメントの選択としてガソリン・エンジンの製造方法再構築は経営戦略上で妥当なものであるのか?」という疑問も生じました。自動車が開発された頃、馬車を生産していた工場がよりよい馬車をつくろうとしたが時代と伴に衰退していった事例、炭や練炭を使っていた時代に次第にガスや電気が普及する中で七輪を製造していたメーカーがより良い七輪をつくろうとして時代とともに衰退していった事例などを思わず思い出してしまいました。