裁判上の和解

昨年から裁判で残業代(深夜労働及び休日労働割増賃金を含む)未払事件で元従業員と争っていた会社の総務責任者から「裁判官から100万円で和解を勧められたが、村上さんはどう思いますか?」と尋ねられました。

この裁判での訴訟額は約370万円でした。元従業員は労働基準監督署に訴えることもなく弁護士に相談し、裁判所に訴えた裁判です。労働審判ではありませんから年月がかかるのです。

相手が提訴した後に裁判上で色々なやり取りがあったようで、今の処、80万円の未払いは確定しているが残りの部分はまだ争っている状態だそうです。

相手が提訴した段階から私は「時間とお金をムダにしない為に早期に和解した方が会社の為になる」と言い続けてきましたが、勝気な社長が「未払賃金は無い」と応訴したのです。

私は何を今更改まって私に確認するのかと思いながら「そりゃ、前から言っているように和解した方が良い!!  裁判上で和解するということは、裁判に負けた訳でも勝った訳でもない。しかし、ここで和解を拒否して裁判官の判決を待つとすると、法律は基本的に労働者を保護するためにつくられているものだから会社は何分か負けてしまうことになります。それに裁判を続けても会社は何も得るものは無いのだから、ムダな気苦労を無くし、時間とお金をもっと有効なことに使った方が良い思います。そうすれば支払わされる100万円はアッと言う間に元がとれます。裁判を続けて喜ぶ者は誰もいません」と伝えました。

その後に色々とお話しをした処、どうも会社側の弁護士が社長を説得するために(私が多分和解を勧めるだろと弁護士は読んだ上で)、社会保険労務士も弁護士と同意見であるということを言いたいが為に今回相談したらしいのです。

私も職業柄、「あっせん」、「調停」、「労働審判」、「裁判」等を体験しましたが、こんな争いをやって得るものはなく、争っている間の気苦労と時間・お金がムダだナ!!と思っています。自分の権利が侵された場合を除き、仮に争って勝訴したとしても「自分が思っていた元の状態に戻るだけ」であり、「争ったからといって状態が良くなる訳ではない」と思います。それならば、貴重な時間とお金をもっと有効な使い方をした方が良いと考えます。ただし、私も「自分の権利が侵されたとき」には自己防衛のために徹底して争った方が良いと考えます。

この会社もこの事件で良い勉強をしたのだから、今後は始業・終業の時刻を単に「記録に残す」だけではなく「会社が管理する」ようになってくれれば良いのですが・・・。

パーキンソンの法則で「人が増えると、それに伴い不要な仕事が増えてしまう。精鋭であれば人は多いほど良いが、精鋭でなければ、人は少ない方が良い。少数であれば精鋭に育つ」というのがあります。従業員が増えると、それまでは必要でなかった仕事が増えていくものです。その中に「時間管理」という問題も含まれています。また人間は見えてても気づかないことは良くあることですから、「記録する」ということと「管理する」ということは異なることだということも認識することが必要です。