残業削減の相談

ある顧問先から深夜の一部の倉庫作業員(有期契約で時給制の従業員)の残業が著しいので削減対策の相談にのってもらいたいというご相談がありました。

そこで、深夜の倉庫作業員だけでなくその部門の社員(昼間勤務)約10名の就労時間数も見せてもらいました。ご相談は深夜の倉庫作業員の残業時間数の問題ということでしたが、社員の残業時間数も月100時間を超えているのが普通の状態であり、問題は深夜の倉庫作業員だけでなく社員の方にもあることが分かりました。

そこで本当は社員の仕事改善も同時に行う方が望ましいのですが、まずはご相談のあった深夜の倉庫作業員の問題の解決から着手することにしました。ここからはまず型に嵌った提案です。

①深夜作業員の中でも残業時間数が月30時間程度の人もいるけど、逆に月100時間超の人も数名いるので、この格差の原因を究明し解消する必要があります。

②深夜勤務の人達の作業内容と所要時間数を日報として報告させ、実態を「見える化」しましょう。

③ただし、応急措置として、深夜作業員の作業配分を決定する社員に残業時間数が多い作業員の作業配分を減すように指示してください。職場に一時的な混乱と不満が発生しますが、これは意図的なものです。

③その上で、残業の多い人の作業効率を検討し、必要な場合には訓練して作業効率の改善をさせましょう。

③そして同時に、作業をフローチャート等にして体系的に見える化し、複数の作業員のフローチャート(作業・仕事の流れ)の関係性も考慮した上で、「ムダ」「ムラ」「ムリ」を見つけ出し、それを排除する対策を講じましょう。

④その上で、作業の標準化をしていきます。

・・・・・と続くのですが会社の総務担当者はいま一つ理解出来ないようなのです。そこで事務所に帰ってから、メールで「私ならこういう手順と考えで進めます」という具体的な案を送信させて貰いました。

この会社では3年前に労働紛争が発生しました。このときも深夜の倉庫作業員と会社とのトラブルでしたが、このとき作業員の本音として「残業することで少しでも収入を増やしたいから、残業できる仕事は他の作業員との奪い合いだ」という発言がありました。そして紛争当事者の作業員は作業配分を決定する社員に圧力をかけ自分に有利な作業配分をさせていました。しかし、この紛争が解決してから会社総務の責任者からは「お蔭さまで夜間作業員の不公平感も解消し、職場雰囲気が良くなりました」と言っていましたが、本当の問題(真因)は解決していなかったようです。

深夜作業の際には社員数が少なく管理が行き届かないので、どうしても問題発生の温床になってしまうようですから、意識改革をさせなければこの問題の真因解決にはならないと思います。現場の人達はどうしても作業・仕事に着目した全社最適よりも、現場の人間関係を重視した部分最適を好む傾向が出てしまうものです。しかし、社員の残業時間数も月100時間超となっていることから推測すると、この会社の仕事のやり方自体の改善をさせないと、深夜作業員の残業時間数削減の本当の対策にはならないと考えます。

最終的には従業員に「コスト管理の意識」を持たせ、全体最適のための業務改革が必要になりますが、この問題を解決するためには「ヒトに原因を求めず、仕事・作業に原因を求める」ことが大切なことです。 そして、「会社経営に奇策はない、当たり前のことを当たり前にやっていくだけだ」ということを胆に命ずることが必要です。