懲戒処分としての減給

ある顧問先からのご相談ですが

「仕事中に本人の全くの不注意から交通事故を発生させてしまい、営業車(保冷車)を大破させてしまった(修理代として約600万円が必要)。事故の過失割合は100対0で相手方に過失はなく、事故原因は全て本人の不注意によるものです。この従業員に対して減給の制裁をしようとして、その額を計算した処、労基法で平均賃金1日分の半分までしか減給できないから約6千円程度しか減給できない。しかし、この減給額では社長が納得しないのだが、どうすれば良いだろうか?」というご相談がありました。

そこで私は「就業規則で『損害賠償請求したとしても懲戒することを免れるものではない』と定めていることを思い出してください。車両修理代の損害賠償請求を本人にすれば良いのです。ただし、修理代100%を本人に請求することは難しく、修理代の1割から2割の額を本人に請求し分割で支払わせることが今回の処置としての限界です。また、本人が非違行為を認め反省して自ら始末書を提出し、その始末書で本来貰えるべき賃金の一部を本人が放棄する意思表示をし、その意思表示を元に会社が一定額を賃金から控除する(降格に伴う減給のようなこと)ことも可能です。よく新聞などで公務員の不祥事の際に〇〇カ月間××割の減法処分と公表されていますが、公務員は一般企業と違い労働基準法ではなく人事院規則に従い処罰されますから、公務員と一般企業の従業員とを同じように処罰しようとすると無理があるのです。一般企業は労基法を遵守しなければ法違反を問われるリスクが発生します」とお答えしました。

その結果、この会社では本人と協議し、本人が自らの意思で始末書を提出して、始末書に反省の意を表するため「賃金のうち×万円を自らの意思で放棄する」と記入してもらうことになりました。