社員を自立させることの大切さ!!

ある顧問先の62歳になる従業員さんから私に「新しい健康保険証を貰っていないようなのだが・・・」という問い合わせが電話でありました。

この会社は10名程度の小規模企業で、総務担当者は決めてなく庶務は社長が行って(社長は営業をしない)いて比較的ルーズな管理をしている会社です。

私は全ての顧問先に関して、健康保険への加入・喪失手続きは代行するけれども、発行された健康保険証は一刻も早く本人に手渡されるように"けんぽ協会"から会社に直送して貰っています。そのため、手続きをしたかどうかは分かりますが、健康保険証を本人に渡したか否かは分かりません。

このことを本人に伝え、「60歳になったときに規定に従い健康保険の資格喪失と取得を同時に行い、その時に新しい健康保険証が発行され会社に届いている筈であるが、管理がルーズな会社だから健康保険証を貰ったか否かを調べるよりも紛失再発行手続きをした方が早いのではないか?」とアドバイスしました。手続きをして2年も経過していますが、ここまでは偶にある普通の話しです。

その後に本人が言うには「今まで余り病気にかかったことはないが、最近久しぶりに病院に行く必要が生じ、そのとき健康保険証を持参できなかったので治療費全額を支払わされた。これは村上さんか会社の責任である」と言うのです。こうなると話しは普通の話しではありません。責任問題です。

そこで私は「手続きを自分でしたら、支払った治療費全額と自己負担額の差額は返金してもらえること」を伝えました。そして「健康保険証は使用するか否かは別問題として自己管理する責任があり、紛失した場合には直ちに会社に申し出るべきであること」も伝えました。

ここまでも、まだ普通の話しです。しかし、この後、話しは更に続きました。

この後、この従業員さんは「年金は2年前に1回入金になっただけで、その後に全く入金になっていない。年金機構に問い合わせしたら、何か訳の分からない書類を提出しないから支給停止となっているということだった。この書類を提出していないのも村上さんか会社の責任ではないか?」と言うのです。確かに、年金を受給する人がハローワークからの高齢者雇用継続給付金を受給するようになると年金機構に届出をしなければなりません。どうも、この届出を本人がしていなかったようなのです。この届出書は年金機構から直接本人に届きますから私は関与しません。しかし、この従業員さんは、自分の思うようにならないのは全て他人が悪いという他責もいい処です。この従業員さんには「年金機構に電話してその書類を郵送して貰い、直ちに添付資料と一緒に返送するように!! そうすれば過去に遡って年金が振り込まれます」とアドバイスしました。

大昔しの日本の企業は従業員さんの個人的なことまで総務部がやっている場合がありました。過去に私が体験したケースでは、年金の裁定請求手続きまで会社の総務の人がやっていた会社があり呆れたことがあります。直ちに年金裁定手続き会社の総務が行うのを止めさせたことは言うまでもありません。こんなことをしていたら、会社退職後も従業員さんは自分のことさえ自分で出来ない人間になってしまいます。

経済環境が激変を続ける昨今の状況の中では『「自立した従業員」を育て、顧客ニーズに俊敏・機敏に対応できる会社となること』の必要性が強調されている状態です。その為にも、また上記のような状態にならないよう従業員本人の為にも、「自立した従業員」までは無理にしても「自分のことは自分で出来る従業員」を育てることが必要です。

依存心の強い従業員を育ててしまうと自責せず他責と考えてしまうようです。また、「依存」と「協力」とは違うことは明らかです。協力するためには各自が依存ではなく自立しておくことが前提です。会社の業務を円滑にし、激変する経済環境に柔軟かつ俊敏・機敏に対応するためにも自立し協力し合う従業員を育てるように心得たいものです。