中堅幹部への教育

一昨日、顧問先から「急がないのだが相談したいことがあるから来て貰いたい」という依頼がありましたので昨日お伺いしました。

パートタイマーさんの年次有給休暇取得のこと等、色々と法律事務的ご相談もあったのですが、一番の要は「中堅幹部への教育」についてであろうと判断し、法律事務的相談は手際よく済ませて中堅幹部への教育に関して時間を割きました。

相談者は「①課長クラスから部長などに昇格すると、それまでとは違って一層経営者としての能力が必要とされるが、それをどのようにして教育して行けば良いか? ②その人達がとるべきリーダーシップ教育はどのようにすれば良いか?」という二点が一番の関心事項のようだと私は判断しました。

そこで、最近の企業の置かれている状況を「ビジネス環境の変化が激しくなっているので、一昔前のように一人の優秀なリーダーがいて社員はそれに従っていれば良い時代は終焉し、社員一人ひとりを自立させ主体的に行動するように育てることが大切な時代となっていること。そうしなげは小刻みに変化するビジネス環境や顧客の要望に対応しきれなくなることをお話ししました。ただし、各社員が自分の価値観だけで判断していると会社はバラバラになってしまうから価値判断基準を出来る限り統一する努力を継続することが大切な時代となっていること」をお話ししました。

この状況下で中堅幹部への教育を考えると、一昔前のようにリーダーが「部下」に「あれをしろ!! これをしろ!!」と指図する勇ましいリーダーの時代は(会社危機の場合を除いて)過ぎ去り、いまはオーケストラ型の組織とリーダーシップが要求される時代となっていると認識すべきことをお話ししました。オーケストラ型組織では「部下」ではなく「パートナー」の意識が大切となります。

即ち、指示命令で部下を動かすのではなく、方向性・方針をリーダーは示し実行するパートナーと一緒になってより良い方法を考え出すこと(役割分担して協働すること)が必要となります。このときに中小企業でよくある間違いは、リーダーは数値目標だけを決めて方向性・方針を考えることを放棄してしまい、部下に数値目標だけを元に全てを考えさせてしまう傾向が強いことです。これでは意に反した行動を部下がとってしまうこともあり、リーダーがリーダーとしての役割を放棄してしまうことになります。

その結果、最近ではコーチングが重視され、また企業理念重視またはクレド・行動指針等を重視する必要があることもお話ししました。

この会社は従業員数150人規模で支店が6カ所、別会社が4つある広島では有名な中堅会社(法律的には大企業の範疇に属します)です。いままでは優秀な現会長が組織を率先していたのですが、流石に寄る年波には勝てず、また社外公務も増えたので、息子に社長職と代表権を譲って勇退する準備に入られたので、優秀なライオンを引いた後のことで(現社長のご子息も非常に優秀な人のですが、まだ社員からの信頼を勝ち得てないようで、組織もトップ交代により新しい組織へと脱皮しようとしています)社内が将来に向かって多少の不安を持っているのです。世代交代の際に、目に見えない処で組織が動揺することはよくあることですが、そのことに気づかれたことは素晴らしいことだと考えます。

取り敢えず昨日のお話しはここまでで留め、具体的な方法論は後日に参考資料を提供して私と一緒に考えて頂くことにしました(私はニワトリ型ではなくブタ型のコンサルティングを行います)。

しかし、この相談者の素晴らしい処は、数年前に大きな労働紛争解決をお手伝いした際に私が「問題解決に時間を割かれるよりも、問題が無いときに課題を自ら見つけ出し、その課題に優先順位をつけて解決することで、問題が発生しないようにした方が良いと思います」とお話ししたことを忠実に実行されていることです。