弁護士から突然の手紙(内容証明郵便)

今年5月中旬頃に、ある顧問先企業に、面識の無い弁護士から内容証明郵便物で、15日前に退職した従業員に対する未払賃金の請求がありました。私がその会社にお伺いしたときその会社は大騒動でした。請求額は約300万円です。

こんなことは、自社で給与計算している企業ではよくあることなのです。弁護士業もビジネスチャンスが減ったうえに弁護士数が増えていますから、昔しは取り扱わなかったような問題にも介入してくる時代なのです。 そして、労基署に届出るにしても届出る前に、または裁判するにしても提訴する前に、会社に未払賃金を請求する必要があるから郵便で通知してくるのです。弁護士の場合は労基署やあっせんの場を使うことは稀で、司法(裁判所)のいずれかの方法(調停、労働審判、本訴訟、仮処分ほか)を取ることが多いようです。その為の内容証明郵便物だと思えば良いのです。私は会社の人に「見慣れない内容証明郵便物だからと言って慌てることはありません。この弁護士が本人の代理人となることの通知であり、これから暫らくの間はこの弁護士と郵便物を中心としたやり取りがあると思えば良いのです。電話や直接話しをするのは避けた方が良いでしょう。」と説明しました。

こんなときには、まず落ち着くことが大切です。弁護士に返信する前に、その従業員に対する賃金を再チェックしてみることは言うまでもないことです。この精査は私が代行しました。その上で弁護士に返信(内容証明郵便物は郵便代が高いので、内容証明でなくても良いが、せめて配達証明か書留め程度にする必要はある)するように原文を作成して企業から返信して貰いました。

この企業の賃金には見込時間外割増賃金が含まれて(固定残業代制)いて、就業規則にも労働条件通知書にもそのことが明記されています。

弁護士からの再度の郵便には就業規則と労働条件通知書の写しを郵送するよう依頼がありましたので、速やかに郵送してもらいました。

その上で、再度弁護士から連絡があることを2カ月間待ったのですが、弁護士からはその後全く 連絡が無かったことがお盆前に会社に訊いて分かりました。そこで、私は「多分、弁護士も諦めて、本人を説得したのではないでしょうか。まだ油断することはできませんが、まずは一段落したと考えて良いと思います」と伝えました。

こんな風に、弁護士から見慣れない内容証明郵便物が届いても慌てないことが一番大切なことです。良識ある弁護士であれば裁判するよりも先に話し合いで和解することを勧めます。裁判にすると費用と時間が膨大に必要となりますから・・・。

相談をうけた私の顧問先企業は、①就業規則がしっかりと整備されていたこと、②各従業員に労働条件通知書を都度発行していたこと、が功を奏したようです。