私生活上の違法行為による懲戒処分

結論から言えば、私生活上の違法行為を原因として懲戒することは難しい場合が多いのが実情です。ただし、その従業員の担当する職務内容、社内外における地位(影響力)、犯した罪の社会的位置づけ(軽重)等にも依りますが・・・。
今週は、その手の相談が一件落着しました。
児童ポルノをネットにUPした人が県警に逮捕拘留され、罰金刑を科せられました。普通の会社では会社の信用を失墜させたということで懲戒解雇をしようとしますが、この会社の社長さんは冷静でした。
本人はPC操作の過失と主張しているし、役付者ではない一般従業員だったし、マスコミ等には取り上げられなかったので(言わなければ誰も知らない状態)、交通違反で多額の罰金を課せられたのと類似していると考え、本人の厚生を期し、また事件のことを同僚も知っていることに配慮され、担当職務の変更に留められました。また、本人も深く反省しているらしいです。
しかし、このように冷静に対処できる社長さんは稀だと思います。普通は感情的になられ懲戒解雇または普通解雇しようとする方が多いようです。
昔し私の経験では、医師による誤診に文句を言おうとして医師の自宅に上がり込み詰問したため警察に連行された従業員が発生した企業では大騒動となりました(このときは新聞にも掲載された)。しかし、これだけでは解雇することは無理です。会社は警察ではないのですから・・・。
電車会社の従業員が車内の痴漢行為で逮捕されたり、バスやタクシーの運転手さんが飲酒運転で逮捕されたならは話しは別(職務に直結する非違行為)ですが、労働契約法により「解雇するには客観的に合理的で、そのときの社会通念で判断して止むを得ないと認められる位の非違行為であること」が必要となります。
正直に言って、この手の懲戒処分の相談が一番悩む処です。何故ならば、犯した罪の社会的重要度がよく分からない場合が多いからです。そのため、この手の相談のときには一呼吸も二呼吸も間をおいて客観的情報を集めて考えるようにしています。